もこ もこもこ

 とびらを開けたとたんから、物語が始まる。しーんとした色で、しーんとした形が描かれていて「しーん」と書いてある。表紙に書かれている「もこ もこもこ」という文字の形とことばの響きが既にその動きを適切に表現している。
 ストーリーらしいストーリーがあるわけではないのだが、三角のくらげのようなものが空中に漂う絵には「ふわふわ」ではなく「ふんわふんわ」になっているなど、絵とことばの
適切さに幼い子どもも心をひかれてしまう。
 この絵本を見ると、谷川俊太郎という詩人の偉大さを感ぜずにはいられないし「もとながさんのかくへんなえがだいすきなので」とその詩人に言わせているこの画家の感性も本物であることが分かる。