1989年3月
カッパエビセンはおなかがいっぱいになれば止められるが、おもしろい本は終わりまで読まずにはいられない。教科書の陰で読んでいる本を先生に咎められると、思わず睨み返してしまったりする。一方、夜中に本を読んでいる子を、せっかく読んでいるのだからと見逃す親がいるようだが、これは絶対に止めさせなければいけない。親が襖を閉めるまで息を殺して眠ったふりをしているスリルも、夜の読書の楽しみのひとつなのだから。
からすのカーさん へびたいじ
道端で生ゴミを漁るカラス達の戦闘的な顔を思い出しながら読むとまるで違っている。
なんとも微笑ましいカラスのエイブラハム·カー夫妻、おいぼれ蛇のガラガラどんに毎日卵を盗まれて頭にきた。蛇の穴に入って退治するのはどうも苦手なエイブラハムは、ふくろうのホーおじさんに相談して石のように固い卵を...。
『ガザに盲いて』の、あのハクスリーが、姪のために語ったというこのお話、机上で書かれた物語とはひとあじ違ったぬくもりが感じられる。
レオナルド・ダ・ヴィンチの空想厨房
こんなにおもしろい本を、子どもに薦めて良いだろうか。子どもの本にしては高値だし、子ども向きの本ではない。が、『最後の晩餐』を描くためにその寺院の酒蔵を空にした話、武器や城の設計の模型を王様の晩餐会で食べられてしまった話など、ダ・ヴィンチが偉大な画家であり、画家と言うにはあまりにも多才な天才であったことを知る大人にも楽
しいには相違ないが、知らずに読む子は、きっと、ダ・ヴィンチをもっと知りたいという欲望に駆られるだろう。
隣席の人のスカートでナイフを拭うのは正しいマナーではない、というメモや、ペストの客をどうもてなすかなど。訳者の後書も必読である。
ひみつのポスト
ルイーにとってたったひとりの友達であるグレンダが引っ越してしまうことになった。
本と図書館が大好きなルイーは、貸出用のブックポケットに手紙を忍ばせてグレンダと文通することを思いつく。母親はルイーを理解してくれないし、グレンダも返事をくれないのだが、ルイーは、ジェーンという眼鏡の女の子に出会い、物語は新たな方向へと展開する。
読者は友情のぬくもりと、推理小説のおもしろさを、同時に味わうことができる。
のはらのひなまつり
素朴なたんぼぼ雛で、野原の動物達がのどかなひなまつり。
日本の春の色、黄色が見返しから本全体を包み、健やかに育てと昔の人が願った雛祭りへの思いが伝わってくる。