1988年10月

 本誌主催のシンポジウムで、帰国してからもインターナショナルスクールに行っている少年が会場の注目を集めた。パネリストとして意見を述べた彼の日本語が美しかったからである。
「家庭でどんな国語教育を受けたか」という質問に「父親に、ことばはドリルで覚えるのではなく、本を読むことによって学ぶように言われた」と答えた。この欄でも繰り返し述べていることだが、子ども自身から聞くとさらに説得力がある。

ぞうさんのうんち

 ある朝、かばくんが散歩に出てみると、原っぱ中が臭くてたまらない。
「くさいのどこだ、くさいのどこだ」と、みんなで捜しまわると原っぱのまん中に、ばんばんばん、と、大きな大きなう。ん·ち。
 子どもにとってうんちは毎日おつき合いする親しみのある存在。大きさも、色も、形も違う うんちの比べっこときては、夢中にならずにはいられない。
 とかく、うんちやおしっこの話をしたがる年ごろの子どもに「いけません」を連発するよりは、こんな楽しい絵本を与えて知らん顔で読んでやるのも一案。
 くれぐれも、おかあさんがいっしょになって「うんちうんち」と騒がないように。


川をはさんでおおさわぎ

 ウインロックの村人達は、一本の川を挟んで、一見のどかそうな毎日を送っていたが、実は、寄ると触るとケンカが絶えず、何ともにぎやかな生活だった。
 ある大嵐の晩、橋が流れ、川の両側の村人達をつないでいた、たった一つのつながりが切れてしまった。
 村人は「これで、けんかがなくなる」とばかり橋を直さなかった。ところが......。
 リズミカルな文章と、シンプルでぬくもりのある絵が、幼い読者の心をとらえ、何度も読み返したくなる。


ウィスコンシン物語 1 パイン・クリークの開拓地

 アメリカといってもカナダに近いウィスコンシン州の、開拓にまつわる大河ドラマ。
 第一巻はここで生まれ育ったアンナというポーランド人の少女の物語から始まる。
 未開拓の地を切り拓いてゆくのだから、それは大人ばかりでなく子ども達にとっても厳しい生活だが、この本は、その苦労話より苦労して得たものの尊さ、充実した生活の喜びを語って心暖まる一冊。
 異国で育つ子のアイデンティティの問題も含んでいる。


絵かきうたあそび

 お母さんのお母さんのころから続いている絵かきうた。中でも「数字絵かきうた」が懐かしい。
 これも日本のマザーグースと言えるかもしれない。