1988年9月

 親が読書好きだと子どもも本好きに育つものだが、これは親がおもしろそうに読む姿を見るからばかりではなく、実際自分の周囲にいろいろな本がたくさん置かれているからである。
 自分の能力以上の本、難しそうな、神秘的な本が目前にあるからこそ、子どもは読書欲をそそられる。「小学〇年生向き」の、読める漢字ばかりで書かれている本なんておもしろいはずがない。
 身に合った本も、もちろん必要だが⋯⋯。

進化の鎮魂曲(レクイエム)

 文字で綴った恐竜絵本、とでも呼びたい読み物である。地球の歴史なんぞには興味のない母親族にはたいくつな本らしいが、この七つの短編にはパノラマのような楽しさがある。
 何十億年も前の生物、あの恐竜の先祖達に遺伝的な影響を与えたかもしれないウラン鉱床の話、鳥類の進化、魚類の進化、あるいは種の滅亡。
 地球の歴史の中での生物の衰退は、その原因が生物学的であれ生態学的であれ、生物としての人間の衰退に、あてはめてみずにはいられない。
「かれらの子孫ホモ・サピエンスは(略)他の多くの動物を絶滅へと追いやり、地球という惑星の絶対的な支配者としておどりでた」との一節など、とかく人間本位に考えがちな我々を反省させられる。


まほうをわすれたまほうつかい

 王様や町の人々のすべての仕事を魔法で片づけていた魔法使いメルリックの魔力が消えた。メルリックがクラ先生のところへ魔力を戻してもらいに行くと、先生はメルリックの
魔法の使い方が正しくないことを教えてから、魔力を返してくれた。
 それからというものメルリックは、大事件の時しか魔法を使わなくなったので、王様も町の人々も大弱り。
 マッキー独特のくっきりした色使いと豊かな表情が、子ども達を物語の世界に引き込み、自分のことは自分でという教訓をオブラートに包んでいる。


大どろぼうホッツェンプロッツ

 本が好きでも嫌いでも、字が読めても読めなくても、とにかくおもしろくて読まずにはいられないので、はじめから第二巻『大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる』第三巻『大どろぼうホッツェンプロッツ三たびあらわる』も、揃えておくこと。
 仲良しの少年、カスパールとゼッベルが、大どろぼうホッツェンプロッツをめぐって大活躍。魔法つかいッワッケルマンもシュロッターベック未亡人のワニになった犬も、誰も彼もが読者の友達になってしまう。


女性が語る水への想い ――大切な水へ愛をこめて

 海外にいると、日本のおいしい水が恋しい。そして日本での水の無駄遣いを思い出して悔やむ。
 野田、森下両氏等の意見から、日本の水の実状を知っておいてほしい。