まっ白で、しかくいたてものが嫌いで、田舎でひとり暮らしをするおばあさんの家に、大きな黒い蝶が迷い込んできた。編み物上手のおばあさんが、その蝶の羽と同じ模様を編んだら、毛糸がふわりと浮き上がり......。
そこでおばあさんは飛行機を編み、満月の夜、孫のタツオが住む団地へと空を飛んだ。騒がれるのは嫌いだから、たったひとりで、たった一度だけ。
こまやかで壮大な構築美を持つ空想物語で読者を魅了する佐藤さとるの作品だが、このお話はむしろ編み物のような優しさが胸に残る。最後のタツオのことば以外、会話はすべておばあさんのひとり言。
読み終わった子どもは、きっと日本のおばあさんにお手紙を書きたくなる。"せえたあを、どもありがと"と。