おっちょこちょ医

 ヘーワ町はデルタ国の......と始まるように、次々と出てくる地名や人名が、ことば遊びになっている。"主人公のトレ・ディストレ先生やヤン・ドースルなどが次は何をするだろう"と読者に思わせる奇想天外な話の展開に、どんどん読み進んでしまう。第一部ではヘーワ町の人々とおっちょこちょいのディストレ先生とのかかわりが、第二部では戦争に巻き込まれた人々の様子が書かれている。
 "おっちょこちょ医"の先生が「故意のうそだけは、ゆるしてはいけない。それをゆるしたら人間は、もう人間じゃない」「ためらうなよ。人をすくって罪になるなら罪をおかせよ」と語ることばで分かるように、子どもには、今の大人が目をつぶりがちな真実を貫き通せる大人に育ってほしいという作者の願いが込められている。

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