1987年4月

 母国語が日本語だと、敬語や漢字が面倒だとか、外国語が覚えにくいなどと欠点ばかり並べるが、数の概念と言う強みを忘れている。
 数詞自体が10の次は11、その次は12、と十進法にしかない、11=10+1という概念を植えつけてくれるが、英語だとtenの次はeleven、twelveと、12までが一単位で、13からようやくthirteenのように、teenで表される。フランス語の数詞のややこしさはそれ以上だし、数だけは、頭の中で考えるときも必ず日本語を使わせたい。

ほんがすき!

 熊の子エンマはテレビが大好き。テレビを見ようとせっかく早起きしたのにテレビは故障。エンマに泣きつかれてテレビを直そうとするが、おとうさんもおかあさんも、電気屋さんも直せない。
 何とかしてエンマのご機嫌を直そうと、おとうさんはふうせんをふくらませたり、おかあさんは歌を歌ったり。とうとうおかあさんがエンマに本を読んでやることを思いつくと......。
 子どもが退屈した時には本を読んでやるのが一番。小熊のエンマのように「ねぇもういちど」と子どもがせがんでくれるように、愛情を込めて、とびっきり面白い本を読んでやりたい。
 エンマの表情の豊かさが、子どもの心をひきつける。


りす女房

 意地悪な兄さんにいつもこき使われていたジャックは、ある夜、森の中で倒れた木に足をはさまれた緑色の妖精を助けたことから、妖精の王様に人間の姿をしたりすの女房をもらうことになった。そしてそのりす女房のお陰で、ジャックは、森の秘密のかずかずを楽しみながら、幸せに暮らしていたが......。
 シンデレラや鶴の恩返し風の童話だが、りすという身近な小動物をヒロインにしているので親しみやすい。兄や村人に泥棒呼ばわりされてろうやに入れられたジャックを、りすの姿に戻って助け出すくだりは、倉石隆の可憐な挿絵も手伝ってワクワクする。


星に叫ぶ岩ナルガン

 これは、交通事故で両親を失った少年サイモンが、移り住んだウォンガディラという田舎で体験する自然との不思議な出合いの物語である。サイモンは、母親のまたいとこのチャリー、イディ兄妹との静かな生活を始めることになるのだが、近くの沼には、思いもかけずポトクーロックという妖精が住んでいた。木にはツーロングという精が、また岩にはたくさんのナイオル達。そしてこのウォンガディラに、はるか遠くの地からやってきた岩ナルガン。
 読み進むうちに現実から引き離され、ぐんぐんと夢の世界に釣り込まれてしまう。小学校高学年から大人まで、読む人の心に深く残るファンタジーの傑作である。


おへんろさん

 日本の春の音と色が、菜の花、せり、よもぎの香りと共にあふれてくる絵本。
 山奥の春霞の中に現れたおへんろさん。かあちゃんのいないタケにとって、このおへんろさんは......。