1987年3月
漫画というものは、読み慣れないとひどく時間がかかる。文字が画面のアチコチに飛んでいるし、昔のように登場人物が個性的に描き分けられていないので、うっかりするとストーリーを見失う。だからと言って、我が子の読んでいるものを知らぬ顔で見過ごさないでほしい。今ほど漫画が良い悪い、玉石混交の事はない。悪いものを読ませるのも困るが、良い漫画まで悪いと決めつけると、子どもの心は親から離れてしまう。
ごきげんななめのてんとうむし
小さなすねたてんとうむしが自分の力を誇示しようと、自分より大きな動物に出くわすたびに「けんかしないか?」と誘いをかけるが、結局相手の大きさに恐れをなし、逃げていくという楽しい絵本。
朝から夜まで、一日の時間の流れを太陽の位置と時計で表したり、ページごとに出てくる動物に合わせて紙面の大きさが変わる面白さや独特の美しい色どりは、子どもにページをめくる楽しみを与える。
また登場する動物と紙面の大きさが変化してゆく趣向は、子どもが物の大きさを相対的にとらえるのにも役立つ。
子どもによく見られる強がりを自然にたしなめる暖かい展開は、エリック・カールならではのもの。
ねえ ねえ あそんで!
くりのきやまのふもとの一軒家に、ばあちゃんといっしょに住んでいるたぬきのたんたは、春も夏も毎日いっしょに遊んでくれたばあちゃんが、秋になったとたんちっとも遊んでくれないので、つまらなくてしかたがない。
主婦の仕事は何か行事の前になると突然忙しくなる。山に住んでいるばあちゃんも、実は秋になって冬ごもりの仕度に追われているのだが、そんなことは一言も言わずに、ただ忙しい、忙しいと言いながら仕事を片づけていく。
遊び上手は働き上手、しいたけを干し、ジャムを作り、たきぎも集めたばあちゃん。でも仕事を終えるとまたたんたと遊び始める結末に、忙しがりやのお母さんになかなか遊んでもらえない小さな読者達は、ほっと安心するだろう。
黒ネコジェニーのおはなし
小さな黒ネコジェニー・リンスキーは、キャプテン・ティンカーに拾われた内気な子ネコ。庭に集まっているキャットクラブの仲間にも入れない。何しろクラブの連中ときたら、歌が歌えたりダンスができたり、みんな何かができるのに、ジェニーは何にもできないのだ。ところが......。
スケートをマスターしてキャットクラブに入会したり、ホーンパイプ・ダンスを練習してパーティーの仲間入りをするなど、はにかみやの子ネコが、努力して何かを身につけては自分の世界を広げてゆくさまは、優しい親や友人がいても、"本人の努力がなければ、いじめや仲間外れから逃れることはできない"と教えてくれる。
たたみのはなし
日本の生活の知恵の結晶、畳の歴史をたどった本。日本の生活習慣や生活様式が気候風土と密接につながることが分かりやすく説明されている。
畳を通して、日本の暮らしぶりを親子で考える良い機会になるだろう。