家出をしたあゆみは、連れ戻されるのが嫌なばかりに、兄のパスポートを使い、男装して宇宙船に乗り込む。ところが、同室になったある星の王子様とその仲間の太一郎にすぐ見破られてしまう。
このシリーズの主人公となる太一郎とあゆみが、星の砂漠に取り残されたところでこの話は終わり、『通りすがりのレイディ』『カレンダー・ガール』と続くのだが、各巻ごとに趣が異なり、軽やかでおもしろいSFである。
この本の後半「雨の降る星」の中で、作者は自殺の愚かさを描き、また「状況に流されて世の中の悪を正さない優柔不断さは、優しさではなく弱さであり、弱さは罪である」と太一郎に語らせている。
近ごろ中・高校生を含む若者たちに広く読まれている作者だけに、この一言は頼もしい。