1985年12月
子どもにお話をすると「それから?」と先を促す。めでたしめでたしと本を閉じても「それから?」と聞く。白雪姫の息子が恋をし、舌切り雀がすずめの学校を建てたのは、「それから?」を連発された昔の親の苦し紛れの産物だが、今の親は「終わり」とニベもない。しかし「それから?」こそ探究心の素である。与えられた勉強しかしない近ごろの子の風潮は、子どもの「それから?」に答え切れなかった私たち親の責任かもしれない。
くるみわり人形
クリスマスシーズンになると、欧米では必ず、バレエ"くるみわり人形"が開幕になる。が、そのストーリーとなると、プログラムに振り付け師マリウス・プチパの作品としての解説があるだけで、ホフマン原作の物語は粗筋しか分からない。
そこでセンダックが、アメリカのパシフィック・ノースウェスト・バレエ団のために、プチパの振り付けから離れ、ホフマンとチャイコフスキーの原点に戻って、新しいバレエのために作り直したのがこの本である。
バレエの舞台装置と衣装デザインをもとにしたこの本は、絵も重厚で画集といった風格もあるが、物語の方も「なるほど、これがくるみわり人形か」と思うほど、読みごたえがある。
全体が十四章に分かれており、毎晩一章ずつ読めば二週間で読み終わる。クリスマス休暇の読み聞かせに最適。
サンタにてがみがとどいたよ
サンタへの手紙を集めに来た小人が、乗ってきた雲を風に飛ばされて泣いていると、織物小人が空飛ぶじゅうたんを織って助けてくれる。お陰でサンタへの手紙も間に合い、小人達は望みの品をもらえた、というお話。
作者が拡大鏡を使って描いたという絵は、優しい心遣いに満ちていて、小人の手紙の文字まで読むことができる。
布を織るという"物をつくる喜び"が、人の役に立つという喜びに重なって、幼い読者の心を暖かく包んでくれることだろう。
日本の歴史 (福音館の科学シリーズ)
大版絵本の見開きを一場面に使って、狩をする人、土器を使う人など、時代ごとの日本の情景を細密に描いている。
日本がまだアジア大陸の一部だったころから現在に至るまでを描いた絵が、各ページ一、二行しかない説明文を何十倍にも補っている。
年号を覚える以前に、日本史の流れをこのような本で自然に把握させておきたい。巻末には絵の解説も加えてある。
むかしばなしうた
金太郎、桃太郎、大江山、はなさかじじいなど、語り継がれ、歌い継がれてきた歌が十二曲。
絵も良く、巻末に楽譜も付いている。