魔法や妖精の好きな子にとっては、本格的な魔法使いものだが、冒険小説の好きな子にも見逃せない本である。
この本は最高位の魔法使いとなるべく生まれついた少年ゲドが、さまざまな苦難を乗り越えて成長していく過程を描く『ゲド戦記』の第一巻である。
高度の魔法を使う力がまだ備わっていないゲドが、高慢や嫉妬といった自分の未熟な心の隙間から生まれた"影"に追われ、やがて逆に追いつめて影と一体になるまで、身も心も成長していく。
読者もゲドと共に、知識と技術だけあっても、ほんとうの意味での大人にはなれないことを悟るだろう。