1985年1月
海外赴任となると、心ある親は子どもの本をドサッと買い込む。買い込むのは良いのだが問題は置き場である。とかく子どもの本棚を新しい本で埋めてやりたくなりがちだが、これが子どもの本離れの一因になる。あまり豊富にあると欲しくなくなるのは大人も同じ。日本に注文して一度にたくさん取り寄せても、与えるのは一冊ずつ、折を見て与えたい。
マグノリアおじさん
この本は一九八二年にケイト・グリーナウェイ賞を受けた。その年、幸運にも作者自身による読み聞かせを聞くことができたのだが、どの頁もリズミカルに韻を踏んでいて、楽しくてたまらなかった。
片方しか靴をはいていないマグノリアおじさんの他愛ない詩で、韻の面白さで読ませるような本なので、日本語訳は無理かと思っていたのだが、谷川俊太郎は見事に訳している。
猫のヤーコプ
猫好きの作者と猫好きのイラストレーターが作った本。貰われてきた仔猫のヤーコプが大人になるまでを三冊に描いている。漱石の猫は著者を「御主人」と呼ぶが、ヤーコプは「あいつ」と呼んで、生意気にも躾をしたり、面倒をみてやっているつもりになっている。
訳が大人向きで洒落ているが、子どもにも子どもなりに面白い。文字ぬきで絵を追っても話が分かり、猫の表情をよく捉えているので、自分も一緒にヤーコプを飼っているような気になる。
日本国憲法
今さらなぜ日本国憲法、と思われるかもしれないが、日本国民であるとはどういうことか、一度はきちんと子どもにも目を通させるべきものだと思う。
文字が大きく、漢字にはすべてふりがながついているので読みやすく。法律用語など、分かりにくいことばには脚注がつけてある。一頁おきの見開きに、山河、田畑、都会、人、車、LSI、など日本をいろいろな角度から見た写真が入っているのも興味深い。
巻末にある旧憲法との比較も良く、また英訳と照らし合わせてみるのも日本国憲法を新しい角度から見ることになるだろう。
はしのもちかた
箸は日本文化の象徴とも言えるが、近頃、大人でも妙な持ち方をする人を見かける。
そんな大人と子どものためのようなこの本は、小人を使った図も分かりやすく、英語版は声に出して読み、覚えるようにと、ことばも工夫されている。