半村良は児童文学作家ではないが、読みごたえのある本ものの小説を書いてくれる数少ない作家のひとりである。情趣ある愛の描写を見れば、子供向けとは思えないのだが、彼の作品には常に夢があり、あるときはSF、あるときはファンタジィ(主人公がお姫様ではなくて飲み屋のおねえさんであるにしても)ですらある。
その半村良が、憧れのムー大陸を求めて旅するアム族とモアイ族の長い物語を書いた。
久しぶりに読みでのある、本の虫には見逃せぬ作品で、現在、単行本が十一巻、その内五巻まえ文庫本が出ている。八十巻まで刊行の予定とか。横尾忠則の挿絵も、この不思議な世界を見事に描いている。