トムは真夜中の庭で

 トムは、嫌いな小父さんのアパートで夏の休暇を過ごす羽目になるが、ある夜、その家の古時計が十三を打つと、昼間は見えない裏庭が現れることを知る。トムは、その過去の世界にうまく入り込み、裏庭でであった少女と遊び続ける。そして最後の日に...。
 これは文句ぬきで面白い小説である。特に英国の古い大きな建物に住んで読むと、まるで現実の出来事のように思えてくる。国外・国内ともによく読まれ、英国ではテレビ向けに映像化されるなど、児童文学の古典とも言われる作品である。
 作者のフィリッパ・ピアスは今も健在で、1986年8月に東京で開かれる国際児童図書評議会第20回世界大会には、講演者として来日が予定されている。一つの文学を両面から味わう良い機会でもあり、特に在英の日本の子どもには、ぜひ日英両国語で読んでほしい。

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