モモはどこからかやってきた浮浪児だったが、人の話を黙ってゆっくり聞く、という性格で、町の人々に愛されている。ところが、その町に灰色の男達が現れ、子ども達から遊びを奪って役に立つ勉強を強制し、人々をせきたてて、時間を倹約させては、その時間を盗んだ。皆は時間に追われて気づかないが、ゆっくり話を聞くことの好きなモモだけは、その異常さに気づく。時間のゆとりを失って死んだような生活をしている友達を助けようと、モモはカメに導かれて時間の国に入り、ようやく、人々に、盗まれていた時間の花を返してやることができる。
――時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子の ふしぎな物語――という副題のついているこの本は、大人が読むと、日本人が日本を諷刺して書いたのではと気になったりするが、子どもにとってはむしろファンタジーであり、読み出すと止まらない。